こんなに昔のレーシングカーは美しかったのか、すっかり忘れていた。
“ローラT70 MKⅢ” 1960年代の日本グランプリで活躍した車だ。
今のテクノロジーの目でみてしまうと、これでは車体は浮き上るだろう、などと思ってしまうが、そんな野暮な目で見てはいけない、当時は戦闘力が最も高いレーシングカーであった。そして同時に魅力的で美しいかった。
先日、鈴鹿サーキットで行われた「Suzuka Sound of Engine 2016」のワンシーン。ヒストリックレーシングカーを集めたこのイベント、年を増すごとに、とても盛況になっている。
今度はF1デモレースのスタートシーン。
先頭の黒いロータス97Tには昨年のスーパーフォーミュラ・チャンピオンの石浦選手が乗り、2番目の白/青のタイレル019は中嶋悟選手がドライブする。そしてフェラーリ、ウルフ、アルファロメオにベネトンなど、多彩な15台のF1マシンが参加した。(何台かは不調で走れなかったが・・・)
そして、久しぶりにフェラーリの12気筒エンジンの素晴らしいサウンドを聞けた。
でも、この写真で見て頂きたいのはグランドスタンドだ。本来のレースイベントでは無いのに、実に多くの観客が詰めかけた。そしてグリットウオークの時などコースに人が溢れかえっていた。
この日、トークショーもいくつか催された。「永遠のライバル 星野VS中嶋 トークショー」はこれまでのイベントでも開催されているが、この日はもっと以前のドライバーで、写真は左から鮒子田寛氏、北野元氏、砂子義一氏と往年の名ドライバーによるトークショーのシーンだ。
この後それぞれ、トヨタ7、ニッサンR380、スカイラインGTRに乗って走られた。
こちらはヒストリック・フォーミュラのデモレース参加車両。1960年代の、いわゆる葉巻型フォーミュラカーによるデモレースなのだが、今回は30数台がエントリーし、こんなに沢山の車が日本にあったのかと感心した。
スターティング・グリッドは長い列になり、1コーナーに突っ込んで行く様は壮観だった。
この日、最後にグループCカーのデモレースが行われたが、終始ガンガン走られたのはマツダ787Bをドライブされた寺田陽二郎氏だ。こちらも久々にロータリーサウンドを響かせて、フルスロットで走る姿は、まるで現役時代を彷彿とさせた。
もはや、殆どのドライバーの方々は70歳前後で、実はレーシングカーの運転はとてもキツイのだ、まるで重量挙げのように、コーナーの度に息を止めて頑張ることになるので。
なのに、寺田さんのタフぶりには感心する。流石はルマン24時間レースに長年に渡り参戦されたドライバーである。
さて、私は観客席にも行ってみた。その観客の多さを感じるのと、客層も見たかった。
いやまさに老若男女、実に様々な方がおられた。家族づれ、カップル、中年ご夫婦、若い人達。
そして、最後のイベントまで殆どの人が席を立つことなく楽しんでおられた。
ヒストリックのイベントはヨーロッパではとても盛んだが、こうして日本でも興味を持たれることが見てとれた。
古い車に未来を感じるのは変だけど、ヒストリックイベントの将来性が見て取れた気がした。