近鉄名古屋駅。
特急“ひのとり”が入線してくると多くの人がカメラを構えた。
“ひのとり”は昨年3月より運行を開始した名阪特急で、”アーバンライナー”に替わって近鉄のフラッグシップたる車両だ。昨年すぐにでも乗りたかったのだが、件のコロナ禍により、移動を、大都市に行くことを控え、ワクチン注射が済むまで我慢をしていたら今日になり、やっと”ひのとり”に乗ることが出来た、という次第だ。
どうせ乗るなら全線を乗りたい。鈴鹿に住む私は一旦、名古屋に向かうことになるので、ついでに”アーバンライナー”で行けば比較も出来るのではと考えた。
近鉄路線では鈴鹿の表玄関となる白子(しろこ)駅から、まずは予定どうりアーバンライナーで名古屋に向かう。
一番前の車両(1号車)がデラックス車になる。
デラックス車の車内。特急料金に(名古屋までなら)たった210円を加えるだけでJRのグリーン車のようなデラックス車に乗れるので、言わば乗らなきゃ損とさえ思える。
アーバンライナー・デラックス車のシート。
当初は茶色系のソファー的なシートだったが、新型の”アーバンライナーnext”が出来てからは、”アーバンライナー”もリニューアルを受けて、同じエンジ色の独立型シートに変わった。
アーバンライナーは運行開始から15年を経過しているが、名阪特急としては、最も豪華で快適な列車であった。
近鉄特急らしい意匠の車内デザイン。
清潔さと重厚感を折り合わせたような落ち着いた印象で、これまで仕事を含め数多く大阪に出向くことがあったが、その帰路、この落ち着いた車内の雰囲気により、疲れを癒す効果もあった。
白子から名古屋へは40分、一旦、名古屋に向かう。
前のデッキからは前面展望が楽しめる。
近鉄名古屋駅に到着したアーバンライナー。
大体、この4番線は特急到着ホームだ。
乗り換え時間は8分なので、一旦改札を出て、折り返し改札を入り、”ひのとり”の入線を待つ。
5番線に入線し、出発間近な名阪特急”ひのとり”。
プレミアムカーは編成の前後端の2両になる。
ネットで購入したのは大阪側の先頭6号車だ。
賑やかな近鉄名古屋駅のホームも、大阪側の先端近くは少し寂しい雰囲気になる。
最後尾のプレミアムカーで前向きのシートを撮影した。
プレミアムカーは入った途端に、素晴らしい高級感が伝わってきた。
立派なシートはレザー製で、淡いベージュの色合いも高級感を漂わせている。
前述のように、今回の切符は近鉄のホームページから「チケットレス特急券」を購入した。
写真は自分でプリントアウトした用紙で、用紙を持ち込むかスマホで証明することになる。まあ、最近は航空券もネットで購入すると同様にA4用紙にプリントアウトして持ち込むのだが、切符で慣れ親しんだ身としては、何とも頼りない。また、乗車券は別途必要だがSuica等を利用すれば、やはり切符はいらない。
近鉄は、従来より指定のシートに座っていれば検札は行われないので、今回も改札から車内検札、改札出口までチェックされる類のものはなく、便利だけど何かスースーする感じがした。
絶品とも言えるプレミアムカーのオールレザーのシート。
何より、シートの形状が良くて至極快適である。
前後間隔がタップリあるので足は自由に伸ばせるし、電動でリクライニングをさせるとランバーサポートが持ち上がって来るので、何とも贅沢な姿勢もとれる。
右はシートの操作スイッチで、各部を操作出来るが、座面部にあるように、シートヒーターも備わっている。
シートはかなり大きくリクライニングするのだが、バックシェルがあるので後席に気遣う必要もないし、逆に前側に前席のシェルがあるのことで自己の個室感がある。
“ひのとり”のひとつの売りは、この前面展望だろう。
前面のガラスが上下二段になっているので、ハイデッカー構造のプレミアムカーから、立って見ても前が見えるように考慮したと思えるし、何人もの人が前に来て前面展望を楽しんでいた。
プレミアム車両のデッキ部にはカフェスポットがあり、ホットコーヒーとスナックの自動販売機が備わる。挽き立てのコーヒー(200円)が飲めるのは有難い、ただ、残念なのはホットコーヒーの1種類だけで、カフェオレやアイスコーヒーなどは無い。
また、この左側にはロッカー(無料)が備わる。
よくカッ飛ばす近鉄特急は120km/hを時々記録する。
いや、今のスマホにはアプリをダウンロードすれば、手元でスピードが見える訳で、便利なものだ。
近鉄沿線で私が好きなのは、名張から長谷寺あたりまでの山間部の景色だ。
その景色の良さと共に、流石は日本一の大私鉄で、堂々たる線形の路線を作り、高速で走り抜けるのも、何とも小気味良い。
終点、難波に近づくと車内の証明がブルーになり、車内放送が流れた。
何とも粋な演出である。
名古屋から難波までの特急料金が1930円、プレミアム料金が900円で小計2830円。
乗車券が2410円なので、合計すると5240円だ。
所用時間2時間7分だが、降りるのが惜しくなるような、快適な”ひのとり”だった。
あっ、まだ帰りも乗るけどね。
12時7分着で難波に着いたので、丁度、昼めしだ。
大阪に来たら食べたいのは、何といっても「お好み焼き」である。
難波には美味しさで有名なお好み屋がある。
それが、この「味乃家」(あじのや)で、以前に一度だけ来たことがあり、その美味しさが記憶に残ってしまった。
また、この味乃家は、以前に喜劇役者の藤山寛美氏がよく訪れていたことが有名な話で、レジの横には写真が飾ってあった。
ただ、人気の店なので昼過ぎでもあり、かなり並んで待つのだろうと覚悟をして訪れたが、意外にも1組が待っていただけで、10分程度で入ることが出来た。
味乃家の店内、カウンター席だったので焼き師の方の見事な手さばきが見られた。
やはり、焼くのは一人なのだ。
写真、左はイカ焼き、たまごに包み込まれた独特のイカ焼きだ。
右はお好み焼き(味乃家ミックス)で、分厚く まさに「ふわとろ」で、美味!
「ここ、初めてですか?」と焼き師のお兄ちゃん。
「いや、2回目だけど、やっぱり一番美味しいね」と私。
「ありがとうございます」
それをきっかけに幾つかの会話を交わしたけど、
今日の待ち時間が少なかったのは、最近はこんなものだと、
やはりコロナ禍で客足は減っているらしいし、特に夜はアルコールが出せないので客が減っている、まして、2日からの緊急事態宣言になるとアルコールは一切販売出来ないので、より客足は遠のくだろう・・・と。
結構、私もギリギリのタイミングで食べに来たものだと、ビールを流し込んだ。
日本橋の電気屋街には、鉄道模型の店も4~5店舗あり、久しぶりに見て回った。
買うものが無くても、好きな模型を見て回るのは楽しく、あるいは美術館や博物館を見て回るのに似ているかも知れない。
歩き疲れたら、一休みする店はここに決まっている。
いつも、比較的空いていることと、この壁の写真が気に入っているからだ。
車両からイタリアの駅であることは判る。
一度だけ行ったことのあるミラノ駅のようだが、その頃を偲んでコーヒーを楽しむ訳だ。
帰路は難波から津駅まで”ひのとり”(分類は甲特急)に乗り、5分乗り換えで乙特急に連絡している。
“ひのとり”は三重県では唯一、津に止まり、以降はノンストップで名古屋まで止まらない。
しかし近鉄は賢く、5分後に鳥羽発の名古屋行きの乙特急に連絡させており、以降の白子、四日市、桑名への顧客を乗り換え設定し、名古屋までの特急停車駅をフォローしている。
ついでに、逆に大阪難波方面に向かう時は、鳥羽行の乙特急が津駅で”ひのとり”の5分前に到着する設定で甲特急(ひのとり)に対応している。
そして来たのが、やはりAce Carだ。
というのも、これまでは従来型の12200系だったが、最近引退したのでAce Carだろうと思っていた。
長年近鉄特急の主力車種であった1220系の引退は、私の住む中部地方では新聞やテレビ等で取り上げられ、特別運行が設定されたりと、多くの人に惜しまれつつの運行終了となった。
しかし、頻繁に大阪往復を利用していた身からすると、アーバンライナーからの車両の落差が大きく、同じ特急列車としてガッカリしていたので、こうしてAce Carになったことは有難い。
Ace Carの車内。全体に明るい基調で、天井が高いので解放感を受ける。
シートは1220系と圧倒的な差があり、座り心地は格段に良い。
津から白子間は、たった10分間ではあるが、乗り物の差を大きく感じる10分間でもある。
こうして、我が街、鈴鹿に帰ったのであるが、
やはり”ひのとり”80000系は、近鉄が現在の都市間特急列車のあるべき姿を熟考し、そして系列の近畿車両がプライドをかけて作ったと思われる、素晴らしい特急列車であった。
同様の意向であったろう”アーバンライナー”は、これまで私鉄で最高の特急車両と思ってきたが、もうすでに15年も経っていたのか。
それぞれの開発に至る思想や車両の内容を見ることが出来た今回の”ひのとり”と”アーバンライナー”での小旅行であった。