イギリスの景色を身近に感じたいこともあって、このレイアウトの製作をしてきているのだが、今回の丘は大変苦労して作ったこともあり、完成すると私の好むイギリスのローカルな風景が現れ、満足出来るものとなった。
線路を跨ぐ橋を過ぎると、駅に続く下り坂。
右手には羊が放牧されていて、左には教会があり、横を下る。
その下には茅葺農家があって、駅の手前には民家や商店が並んでいる。
といったシチュエーションになるのだろうか。
レイアウト左端のこの部分は、当初はこんな殺風景なものから始まった。
支線を含めて3線の線路が走り、それも180度以上旋回するのでオモチャっぽく、さて、どうしようかと思い悩んだ部分である。
そして今回完成したのが、この丘のシーナリィで、上の写真と比較すると、その違いは明白だ。
線路を丘や橋で見えにくくすることで景色が優先され、実感味が出てくる。
丘はコッツウォルズ地方をイメージし、羊が放牧されているのどかな景色を再現させたかったものだ。
アーチを描く石積みの道路橋はイギリス特有の形をしている。
牧草地と道路側の境界は石積みの壁で、地方に行くとよく見られるものだ。
そして線路側の境界にはワイヤータイプの柵を設けた。
ということで、苦労した丘の製作を写真を交えて説明したい。
長くなるので、興味のある方はお付き合い下さい。
まずは橋の製作から始めたが、PECO製のこの道路橋は、複線の線路を跨ぐもので、かつ高さも非電化、つまりパンタグラフのある列車は通れないもの。
これを、まずはアーチのRを生かした状態でカットして3線が通るように幅方向を広げ、且つ、どの高さならパンタを上げて通過出来るのかリサーチをしているのがこの写真。
因みに赤い機関車(ダッチェス)は前のオーバーハングが最も大きい車両。
橋の幅と高さが決まったら組立に入るが、キットは両側面にあたる石積み部分があるだけなので、基礎と道路部分を発砲スチロールのブロックを利用して作る。
線路を跨ぐ部分は直角に横切っていないので、かなり斜めにカットしている。
下の写真では出来た道路橋を置いてみたところ。
道路橋の外側に築堤状の丘を作ることにし、スタイロフォームを重ね、削って製作するが、この丘は背景への目隠しにもなる。
さて、いよいよ羊の丘の製作にかかるが、まずは地面高のかさ上げから始めた。これは道路橋の高過ぎ感を抑える意味もあるが、それより地面高を駅舎出口の高さに合わせるのが主な目的である。
ということで20mmのスタイロフォームをベース材料とした。
そのスタイロフォームの道路となる部分に切り込みを入れて、橋側を持ちあげてやると綺麗な坂道が出来る。
因みに道の向こう側の切り込み量を少なくして、茅葺農家のある奥の部分を少し持ち上げてやると、高さの異なる土地となり、地形に変化を与えられた。
駅前の地面はこのようになった。それまでの大きな段差のあった駅入口と地面の差は無くなり、タクシーを置いてみると駅前らしいイメージが広がる。
駅前は三角地ではあるが、車が旋回するスペースはある。また、家や歩道も仮置きして駅前のイメージを高める。
スタイロフォームを削って全体を整え、また道路ののり面をスタイロフォームで埋める。すると綺麗な道路橋へのスロープが出来たのだが、ふと考えると、こんな綺麗に整備された道はイギリスの田舎道らしくないんじゃないか、と考え込んでしまった。
もともと道の手前側は道より低い牧草地をイメージしていたのだが・・・そうだ、丘を高くして道が見えなくすれば良い、というのも本来、イギリスでは丘を削って道路を作っているところが多いではないか。
ということで、丘のかさ上げが必要になったのだが、では、どうやって丘を作ろうか、と。
築堤部と違い、あくまで緩やかで自然な丘を作るには、スタイロフォームを重ねて削るのはむつかしい。
で、ホームセンターを回りつつ考えたのが金網による方法である。
金網の硬めの剛性を生かして、適度にこんもりした丘の形を作れるのではないかと。
金網は外形を地面に合わせて切って、スタイロフォームに接着し、中に入れた骨というかリブに合わせて、盛り上がった形状を作ることが出来た。
そして、金網の上にプラスタークロス(KATO製)を濡らして貼って行く。
こうして丘の形が出来て、石膏が乾くと同時に金網もグワグワすることなく固まった。
こうして見ると、まさか中は金網によって整形されているとは思えないだろう。
道路も作り方を悩んだところであるが、結局ボール紙を使うことにした。
写真は既に形をカットして仮置きした状態だが、最初は下が透き通って見えるトレーシングペーパーにより、現物合せ的に道をレイアウトして、それを型紙にしてボール紙に移した。
その後、ボール紙に塗装をすると写真のように舗装道路が出来上がり、駅前の部分も実感味が出て来た。
真っ白なプラスタークロスは、草を撒くにあたり、下地に緑の塗装をしておかねばならない。KATOのアンダーコート・グリーンを使用した。
そして、この上を牧草地にしていくことになる。
今回、初めての試みだったが、草を撒くのに使ったのが、このNOCH(ノッホ)製の「Gras-master 2.0」(日本名:芝生の達人)だ。
これは、この容器の中に草に見立てたナイロン繊維(色々な種類がある)を入れて上から振りかけるもので、賢いのは手前のコード先端のクリップを地面側に装着しておくと、遅延乾燥タイプの糊を使用するので通電し、撒かれた草が静電気により起きる、というものだ。
草は数種類を準備したが、牧草地の、いわゆる羊が食ってしまうところは3mm長さのもの、後に柵を作る外側には6mm長さの枯草色の多いものを撒いた。
下地塗装や糊の塗布、数種の草の用意など、準備は結構大変だが、いざ撒き始めると見ている間に草地が出来上がっていった。
牧草地の道路側の石積み壁は、イギリスでよく見受けるものなので表現したかったものだが、自分で工作して作るにはあまりに大変なだけに、HORNBY製品だが、こうした製品まで揃っていることは大変ありがたかった。
問題は線路側のワイヤー式の柵で、写真は使用後の残りの部分を写したもので、他に細いナイロン製のピカピカのワイヤーが入っていた。
RATIO製品だが、封を開けてみると、プラで出来た柵の棒の部分には当然穴が開いているものと思っていたが、無い。ワイヤーを4段に張るつもりであり、棒も20本ほど使う予定なので唖然としたが、つまり0.3mmの穴を80カ所も開けることになってしまった。
ワイヤーは付属のナイロンのものは止めて、ホームセンターで0.25mmの白色塗装済みの針金を購入した。
出来たワイヤー柵と牧草の周りの仕上げ。
この柵の棒の穴を全てピンバイスで開けた苦労も、こうして実感味のある景色になると苦労も吹き飛ぶ、というもの。
また、草は前述のように、羊が食んだ柵の内側は短く、外側は長い草を撒いたが、且つ、その上にNOCH製の草むらの塊を接着した。
これも自然の感じを出すのに役立ったようだ。
ということで、長々と苦労話にお付き合い頂いた訳だが、
最後は牧草地の横の芝生の部分。
柵は、こちらは木の柵(プラ製品でRATIO製)にして、木の色も少し日焼けした感じに仕上げた。
この綺麗に生えた芝生の部分(FALLER製、芝生マット)さて、どんな感じに仕上げてみようか。