乗っている人間はともかく、この車の美しさ、あのエンツォ・フェラーリをして「世界一美しい車」と言わしめた美しいデザインの車である。
半年ほど前のこと。私の鉄道模型クラブの友人より、お隣のジャガーEタイプをお持ちの方が免許を返納され、しかし、ジャガーは時折走らせたいのだが、と頼まれた故、私に運転の可否を聞かれた。無論、言わば「喜んで!」だったのだが、私のスケジュールと、何よりオープンエアーの車なので、気候の良い時にと思っていた。
ようやく秋の気配を感じる中、ジャガーEタイプをドライブすることが出来た。
大阪の某所。このように雰囲気のあるガレージに保管をされていた。
オーナーから諸々の説明を受ける私。
コックピットドリルからボンネット内の説明、トランクに至るまでお聞きし、一緒にガソリンスタンドまで往復して試乗の準備を整えた、その間、結構1時間半ほどかかったかな。
この車はジャガーEタイプのシリーズ1の4.2リッターバージョンだ。
ジャガーEタイプは1961年のシリーズ1 3.8リッターから始まる。
そして、1964年のマイナーチェンジにより、排気量が4,200ccになることと、内装、ブレーキ、ミッションなどがブラッシュアップされた。中でもノンシンクロだった1速にシンクロが入ったことや、ダッシュボードのメーター部やセンターコンソールがアルミ板から革張りになったことなど、完成度が格段に上がり好評を博したのが、まさに当モデルである。
私が好きなのは、このデザインとは別に、ジャガーはサスペンショに造詣が深いことである。
このEタイプでは、写真のダンパー部にコイルスプリングが無い。トーションバースプリング(真直ぐなバネ鋼)を、おそらくロアーアームのインナーの軸部分に入れている。
トーションバースプリングは金属の捩じれを利用したもので、プログレッシブルレート(可変バネレート)が非常に有効なスプリングで、かつ省スペース性もあり、現在もレッドブルF1のフロントサスペンションに採用している。
因みに、ホンダS500/600/800のフロントサスペンションもトーションバースプリングを採用していた。加えて言うなら、このEクラスの様々を見ると、ホンダがスポーツカーを作るにあたり、色々参考にされたのだろうな、とも思う。
走行して驚いたのは、アクセルの反応が強く(強烈で)、4.2Lのビックトルクにもより、1速で踏むとドンッと加速し、驚いてアクセルを離すと、ガクッと落ちる。
特に街中では、ややもするとガクガクの連続になる、これは手ごわいぞ。
いや、これはアクセルを殆ど踏まなくても良くて、動き出しはアクセルとクラッチのデリケートなペダルワークが必要だが、動き出せば殆どアクセルを踏み込まず、早めにシフトアップを次々に行うことで、巨大なトルクに助けられてスムーズな運転が出来るようになるのだった。
写真は中国道の走行で、左に大阪モノレールの支柱が見える。
この車は以前にカリフォルニアから輸入された左ハンドル車で、助手席に乗って頂いた友人からは、「いつも車線の右に寄り過ぎ!」との警告を受ける。しかし、私は10年以上もプジョー405に乗っていた経緯があるので左ハンドルには慣れていたはずなのだが・・・確かに、この写真を見ると右に寄ってるなぁ。
あるいは丸い車体と長いノーズゆえ、右前方向の位置感覚がズレているのかも知れない。
高速道路を30分ほど飛ばして走り(オーナーからのご希望で燃焼室/エキゾースト系を焼く為)、そして、大阪の北部、国道173号線で能勢の山中を30分あまり走って、最後にこの細い道を上がると目的地のカフェに到着した。
写真を写したいとお願いしていたのだが、まさに、Eクラスの似合うカフェに到着した。
特に、高速道路を降りて国道に入ってからは緩やかなワインディングロードの連続で、この車の真骨頂。空いていれば、より快適なドライブとなったろう。
やはりジャガーだ。乗り心地が良く、ラック&ピニオンのステアリングは正確で当時にしてはシャープ(無論、パワステは無いので、低速時や切り返しは死ぬほど重い)。
そして、有り余るほどのパワーとトルクは悠々たる力強い加速が得られた。(車重1,300kgに275ps/42.0kgf)
ジャガーを見下ろせる席でお茶を頂いた。
最初に「カフェオレ」を注文したけど、いや、ここはやっぱり「ミルクティーでしょ」とイギリスのティータイムに合わせた。
ジャガーEタイプの試乗、とても良い体験をさせて頂きました。
オーナーのN様、ありがとうございました。
そして、右寄りを走り怖い思いをさせてしまい、また、トンネルに入る都度、ダッシュボード中央にあるライトスイッチを操作して頂きましたコ・ドライバーの長澤様(あっ、名前を言ってしまった!) 本当にありがとうございました。
PS:久しぶりに自動車の運転をした。
微妙なアクセルとクラッチワーク、ストロークの大きなシフトワーク、何故か手が届きにくいほど奥にあるウインカーレバー、その他。
ポジションも現代と違い少々不自然で、ハンドルに対してペダル配置が近く、大阪市内ではストロークの大きい重めのクラッチワークが頻繁で、もはや足がツリそうな状況だったが、高速道路に入って治った。
こうして、大げさに言えば久しぶりに自動車を操縦する感覚を、思い出していた。
しかし、このEクラスでイギリスのA級国道を走ればどれほど気持ち良いことだろう。
緑の丘の広がる、緩やかなワインディングの道。(日本では阿蘇や十勝の感じかな)
90キロ前後で快適に飛ばして走り続けるのが、この車の魅力だろうな。
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