私のイギリス型レイアウトの車両の中で、最も花形車両と言えるのが、このDapol社製の“マラード”である。
無論、実物の“マラード”もイギリスで最も有名な機関車で、蒸気機関車の世界最速レコードとなる203km/hを記録している。
それはともかく、写真をよく見て頂くと判るが動輪が空転している、つまり、この3%の上り勾配で客車4両を牽くと空転して上れなくなるのだ・・・
このDapol製のマラードは非常に良く出来ていて、当然DCC(デジタル・コマンド・コントロール)仕様で、実物同様の3気筒の素晴らしいドラフト音を出して走り、発煙装置に加えてキャブ(運転席)内の石炭の火口にもシャベル音と共にチラチラと光を発する。
というように、言わば自慢の機関車なのだが、しかし坂で止まってしまっては興醒めであり、何とかしたいと思っていた。
通常、空転への対策は、このようにボイラー内の隙間に鉛のウエイトを載せて輪荷重を増やして粘着力を上げる。写真はダッチェスに施したものだ。
因みに、ドイツ系の模型では動輪の一部にゴム動輪(タイヤ面にゴム輪を入れたもの)にして摩擦力を効果的に上げている。
車体を分解してボイラー部(車体内部)の隙間を調べたが、キャスティングで作られた車体は内部のモーター、発煙装置その他をギリギリに避けて鋳込まれており、メーカーとしても出来るだけ車体重量を上げる努力をした模様で、新たにウエイトを載せる隙間が無い。
これには困った。
輪荷重が増やせられない。
そこで、
逆転の発想をしてみたらどうか・・・と。
つまり、車両側で対応できないなら線路側で何か出来ないものだろうか、と。
まず、やってみたのが、この写真で、線路の手前側にレールより僅かに高くゴムを敷き、動輪との摩擦係数を上げてスリップを防いでは、と試してみた。
これは見事で、機関車がこの部分に来た途端に空転は無くなり、ビュンと速度が上がる。
これはイケるかな? と思ったが、何周かするうちには車輪が浮いて集電不良でドンッと止まってしまう。また、ある時は車輪(特に前輪)浮いて脱線してしまう。
ダメだコリャ・・・となる。
次に思いついたのが、この写真の方法だ。
これは極薄のアルミテープをレールの上に被せてしまおう、というもの。
アルミ箔なら通電するし、おそらくレールと車輪による接触面より、少しは接触面積が増えるのではないだろうか・・・と。
試してみると、これは見事に正解で、ほとんどスリップすることなく坂を上った。
写真の上に見えるのがアルミテープで厚さは粘着部を含めて0.2mm。
線路に貼った場合のゲージ(線路軌間)は、KATOのユニトラックを使用しているが、オリジナルが16.8mmで、アルミテープを貼った後は16.5mmになった。
尚、粘着面は通電しないので、そのままレールに貼るわけに行かず、両端を折り曲げてアルミ面をレールに接触させる必要があった。(写真は説明用のダミー)
左写真は完成状態で、アルミテープの幅はなるべく広くして電気抵抗を減らしている。
この方法では、銀紙のようなピカピカ光ったものが線路上にあるのだが、
私のレイアウトのメインラインは複線になっていて、実はマラードを走らせる側の線路は冒頭の写真とは違って、上り勾配は逆側のレイアウト奥側であり、表からは線路が見えない場所になる。
因みにこれまでは、この裏の勾配でマラードは、よほど飛ばしていない限り「ウーンウーン」と空転をして止まってしまっていた訳だ。
しかし、こうして何とか空転を防ぐことが出来て、
我がマラードの牽く”フライング・スコッツマン号”は、快調に坂も走り抜けるようになった。