“軟派、硬派”という言葉、最近ではあまり使われなくなった。軟派はナンパと書いて女の子に声を掛ける意味だけに使われることが多い。
一方、硬派となると、殆ど使われることが無くなったようだ。
そんな硬派という感覚を思い出させてくれたのが、この車「メルセデスV350」である。
このクラスの車は日本車でもアルファードやエルグランドなど、広くて快適な車として結構浸透している。
たまたまメルセデスのV350に乗る機会があり、そんな日本のクルマと比較して、どうなのだろう、という興味を抱いた。
最初にVクラスの車を見た印象はデカいというか、寄り難いものを感じた。
全幅で前述の日本車より50mm程広いからなのか、スリーポインテッドのマークゆえか、いやそれよりもカッチリとしたデザインがある種の威圧感を感じさせるのだろう。
運転席も、そのデザインの意匠はメルセデスそのもので、スイッチ類もセダンと変わらない配置だし、右手を延ばせば丁度そこにあるライトスイッチと言い、独特のものだし、シンプルで扱いやすい。
日本車の豪華さを強調したデザインとか、ソフトで便利装備満載のそれらとは異なり少々味気なくも感じる。
そしてシートは当然のように硬いものだ。
この日は大人5名乗車だったが、走り出してみて、まず気付くのが足廻りが硬いことだ。
路面の凹凸や、舗装の継ぎ目など確実に拾う感じだが、但し、ハーシュネス(ガタビシ感)は全くと言って良いほど消されている。
高速道路に入ると、この車は真骨頂を発揮する。
前述のように5人乗りでもシッカリ足は高速走行で全く安定しており、安心感タップリに快適に走れる。
ベンツ車独特の直進性の高さと共に、ハンドルのフィーリングが良く、切り始めから自然なフィールの切れ味で、高速でのカーブもロールの少なさから安定している。
またエンジンが低い回転域からトルク/パワーがあるようで、僅かなアクセルの操作で欲しい以上の加速が得られる感じが気持ち良い。
そしてブレーキも軽い踏力で良く効き、これも高速走行の安心感に寄与していよう。
そうか、この車、欧米の平均速度の高い高速道路に適したものだし、速度制限の無いアウトバーンでは150km/h以上の速度で安心して走れる性能を備えているようだ。
それに一般路も、地震の無いヨーロッパでは路面の不整は少なく、この硬い乗り心地も問題ないのだろう。
装飾を嫌い、多人数を乗せても本来のクルマの性能、つまり走り、曲がり、止まる、という性能を満たしているあたり、何か硬派な車という印象だったな。