“アルファ ジュリエッタ クワドリフォリオ・ヴェルデ” ジュリエッタの最上級モデルである。
先日、兵庫県のセントラル・サーキットで開催された八光自動車のジラソーレ走行会で、いつものようにインストラクターを務めさせて頂いているのだが、今回使用させて頂いた車が、このジュリエッタだった。
車好きならジュリエッタの名前を知らない人は稀だろうし、その懐かしい名を冠した現代のジュリエッタに興味を持つ人も少なくないだろう。
初代のジュリエッタは1950年代に誕生し、第二世代は1970年に、そして2010年に発売された今のジュリエッタは第三世代となる。
つまり、暫らく途絶えていた車名の復活であり、これまでのジュリエッタがスポーティモデルとして名車であっただけに、その名称には神秘性すら覚える。
私はこの新しいジュリエッタを走らせるのは2回目になる。
前回は鈴鹿ツインサーキットという、言わばミニサーキットで、マクラーレンやアルファ・ミトやジャガーなどと交互に乗った時で、あまりの忙しさに車を評価する意識も持たなかった。
そんな経緯もあったので、今回はしっかりジュリエッタに向き合うつもりで、また、念願のサーキット外、つまり一般道も走る機会も得た。
アルファ伝統の四葉のクローバーを意味する、この“クワドリフォリオ・ヴェルデ”のスペックは、排気量も伝統の1750ccで、他のジュリエッタの1370ccより、ひと回り大きく、共にターボを備えるが、DOHC16バルブのエンジンは170psから235psへと大幅にアップしている。
ミッションはマニュアルシフトのみで6速だ。最上級モデルがマニュアルだけという、いかにもスポーツライクなアルファらしい設定であり、久々に3つのペダルとヒール&トウを操作することになる。
コックピットは、革シートや諸装備など最上級モデルとしての高級感がある。
シートとステアリング高さを調整するとしっくりとくるポジションが簡単に得られた。
マニュアルシフト車の楽なのは、事前のコックピットドリルが簡単になることで、近年のハイテクの進んだ車では、走り出すまでに色々な知識を入れる必要があるので。
ただ、走行モードの選択は必要で、サーキット走行なのでダイナミックモードにする。これは、さまざまな走行プログラムを変更するもので、スロットルレスポンスの向上やオーバーブーストも与えられ、デフロック機構も作動するのでアンダーステアの軽減やトラクションの向上も計られる。事実、ノーマルモードとはパワー感もグンと違っていた。
走り出してすぐに感じたのは、しっかりした足、そして、力強いパワー感である。
「あれっ、ジュリエッタって、こんな感じだったかな?」と。
やはり、このクワドリフォリオ・ヴェルデは、サスペンションも専用のスポーツ・サスが与えられているし、225/40R18という大きな18インチタイヤを履き、235psのパワーを、ターボの遅れを感じることなくレスポンス良く伝わってくる。
「これはいいぞ」と、気分が乗ってくる。
試しに、下りの中速コーナーの中でアクセルをオフにしてみる。どの程度巻き込むのかを試す為だが、全然平気だ。殆ど巻き込みなどなく、僅かに進行方向が内側に向くだけで、リアが出る様子も見せない。
逆に、上りの中速コーナーでアクセルを大きく開けてアンダーステアを試してみるが、これも微小で、殆ど正確にラインをトレースしてしまう。それも、その後の20人近くを全開タクシー走行で乗せて走った最後まで、アンダーが強まることは無かった。
こんな車だと、極端に言えば誰でも上手く走れてしまえるし、特にスピン事故やアンダーステアで飛び出す、といった危険性は大きく減ることだろう。
言わば、車が腕をカバーしてしまう時代になってきているのか、とさえ思ってしまう。
また、ブレンボの4ポットブレーキも同様に、ハードに走行した最後まで効きが落ちることは無かった。
「いやー、良く出来てるなぁ」と、感心することしきり。
こうした車の安定度、落ち着きにリンクするように車重は結構あるな、とも感じる。後で聞くと車重は1440kgとのこと。因みに他のジュリエッタより40kg重く、最上級バージョンとして性能向上や装備その他で当然の上昇分だろう。
昼休みを利用してサーキットの外に走りに出てみた。
サーキットから一般道に出てみると、道は空いているので一気に加速する。
「速い!」素晴らしい加速だ。
サーキットでは、どんなに加速の良い車でも、すぐに慣れてしまい、より速さを求める感覚になってしまうものだが、しかし、一般道に入ると、こんなに速いのか、と改めて驚いてしまう。
セントラル・サーキットを出て少し走ると、僅かの区間だがワインディングロードがある。
コーナリングを見るには丁度良い。ここでは、ハンドルに対する反応の素直さ、回頭性の良さと共に、ビクともしない、とても安心感のあるコーナリングで、サーキットに於ける限界性能とは別の、そう、本来のこの車の持つコーナリングの素晴らしさを体感することが出来た。
乗り心地は、足が固めてあるにもかかわらず、突き上げは無く、ハーシュネスもよく抑えられている。
硬さと乗り心地という、相反するそれらは大変むつかしい課題であり、サーキット走行まで含むと、同じ足では無理とさえ言えるのだが、このジュリエッタは高い次元でクリアしている。
「いやー、よく出来ている」と、つくづく感心してしまう。
何か、褒め言葉ばかりになってしまったが、本当だから仕方が無い。
それこそ「ウソだと思ったら、乗ってみて下さい」ということかな。