色々な会議の関係で東京にはよく行くのだが、殆どの場合、会議が終わるやトンボ帰りをするので観光的に東京に居ることは少ないのだが、先日は夜のパーティ出席だったので宿泊し、翌日にオフ日が取れた。
で、初めて東京国立近代美術館を訪れることが出来た。
丁度、常設の展示以外に小野竹喬(おの ちっきょう)展をやっており、久々に絵画を堪能することが出来た。
これは地下鉄の竹橋駅にあった広告だが、ご覧のように小野竹喬は新聞協会賞を最多の24回受賞していて、文化勲章を受章している画家。
明治から昭和にかけて、10代から89才まで75年間にもわたる創作活動をしており、今回の展示では本制作119点とスケッチ52点という、実に数多くの作品が集められ、それらを見ることが出来た。
そして、作品は殆どが私の好きな風景画であり、とても興味を持って見た。
展示方法は作品が順路にしたがい年齢を追っているので、作風の変化がよく見えるのも興味深かった。
やはり10代の頃のスケッチでは、しっかりとデッサンをしており、その写実の中にも個性あるやさしい雰囲気が見られた。
20代では新しい日本画を目指しており、また水墨画による作品も見られた。
そして、30代にはセザンヌなどの西洋近代画の影響を受けた作品、その後、ヨーロッパ各国を見て歩き、鮮やかな色彩の画風となっている。
50代になると、改めて日本らしさを求めるように水墨画と彩色画が交錯する。
70代では、簡素な表現になり、例えば、青い空の中に枝だけが描かれた作品など、シンプルだけに心を打たれた。
80代後半に、奥の細道句抄絵を発表し、松尾芭蕉の句意を絵にするという、詩情ある作品を残し、89歳で亡くなっている。
こうして見ると、絵画を通してではあるが、人の人生そのものを見ているような気がした。
若い時の学び成長しようする姿勢。やがて日本から世界へと興味が広がりエネルギー溢れる頃。そして再び日本の良さを思い起こす。ついには欲や見栄の無い心を持つようになっていく。
というように。
誰だ、学校での決まった給食から、サラリーマン時代には定食を欲し、収入増と共に洋食とワインを気取るようになり、しかし成人病を患い、和食の良さを見直す。ついには寄る年並と共に粗食になっていく。
まるで食欲の変化に似ている、などと言うのは。