もう60年近くも以前になるのか、私が確か中学か高校生だった頃、鉄道模型趣味誌(TMS誌)でレイアウトコンペがあった。図面によるコンペティションだったが、そこに応募して入賞し、賞品として頂いたのが、このカツミ製のED70だった。
その応募レイアウトは、狭軌私鉄をテーマとしたレイアウトを設計した。つまり、歴史のある私鉄には後発の広軌私鉄とは違う独特の雰囲気があるし、一方で伊豆急行が開通し、国鉄の優等列車も乗り入れる路線の魅力も当時、影響を受けてレイアウトを画いていた。
そんな思い出のある「賞品」を、未だに持っている訳だ。
さて、レイアウトを持ちたいと思っても、そのスペースを確保するのは大変である。
ましてや、HOゲーシとなると、それこそ床の上に線路を組み立てて・・・ということになるのだが、
ところが、ヨーロッパの線路は360R(半径360mm=直径720mm)が標準的最小カーブの設定であり、この線路を使えば定尺(1820mm×910mm)、いわゆる畳1枚の大きさ、というか市販の発泡スチロール上にレイアウトが出来るのでは、と作ったのが、この定尺レイアウトである。
2004年のRM MODELS誌「畳1枚で16番は愉しめる」を発表した。
これが線路図で、線路はフライシュマン・プロフイーレールを使った。小さな半径のカーブに加えてカーブポイントがあることで省スペース化が可能となり、交換駅やリバースまで組み込んだ魅力的な線路配置のレイアウトを作ることが出来た。列車交換駅を2ヶ所設けることで、3列車を交互に走らせることが出来た。
最大20m級客車3両と機関車の4両編成まで収まったが、まさにカーブポイントのなせる技である。
ヤードも設置したので2編成の貨物列車を置き、ケーディーカプラー装着(当然アンカプラーも設置し)により、貨物列車の入替や、機関車付替えの機回しなども楽しめるようにした。
KATO製の車両は発表値より遥かに小さなカーブ(356R)を、F級電機たるEF58も難なく走り、このような魅力的なシーンも小さなレイアウトの中で作ることが出来た。
HNモジュール運転会での C56 DCC仕様 。
DCC化(デジタル・コマンド・コントロール)も勧められて、このKATO製のC56から組み込んでみた。クマタ貿易製のデコーダーを組み込んだのだが、このC56の複雑な構造の中にモーターのフローティング絶縁化と、小さなテンダー(石炭車)にデコーダーとスピーカーを組み込むのは至難の業であった。
しかし出来上がってみると、素晴らしい汽笛音(ボーッという長音と、ボンッという短音)に、シュッシュッというドラフト音、そして停車中のヘッドライト点灯など、音と光が加わる楽しさは、これからの鉄道模型の方向性が伺われるものだった。
以前の定尺レイアウトを置いていた部屋(六畳間)を整理し、ほぼ部屋一杯に3300mm×1300mmのイギリス型レイアウトを作った。
(鉄道模型趣味誌 2016年4月号 [Big Four SUZUKA] を発表)
線路はKATOのユニトラックを使った。それは線路から配線類やスイッチまで統一規格化されており、またポイントマシンが内蔵されていることから、製作(施設)が容易なので採用した。
本来、景色は全てイギリスだが、各ストラクチャーは置いているだけなので、部分的ではあるが、こうして日本のストラクチャーに置き換えることでHOゲージの日本型も走らせられる。
定尺レイアウトでは、長編成は無理だったが、このレイアウトでは5~6両編成の列車が、言わば伸び伸びと走り回れる。
写真のTOMIXの東海型は、とても良い出来の製品だ。DCCでは無いが勾配での速度の上下も少ない。(DCC車は勾配でも一定速度で走る)
「東海型」、個人的には、この年代の車両あたりまでが印象深い。
支線には、丁度このレイアウトが完成する手前でKATOから370Rの曲線が発売され、早速、使うことが出来た。
その支線には、琴電3000形がよく似合う。
お互いに「ピャー」と、汽笛を鳴らしてすれ違う様だが、少し低い「ピャー音」はEF58、甲高い「ピャー!」はEF65と、それぞれのタイフォン音の違いまで楽しめるのもDCCの特徴である。
この部分は約3%の勾配だが、DCC改造を施した両機関車はBEMF機構により、ほぼ一定速度で走るので手放しで走行を見ていられる、いや、ファンクションボタンで汽笛は鳴らすけど。
私の鉄道模型の趣味も、後期はイギリス型が中心となったのだが、当然、始まりは日本の鉄道からで、それはいつまでも基盤のようにあり、興味が尽きることは無い。