先日、電話が入り「ナンバー付きのカドウェルをサーキットで走らせています」とのこと。
少し混乱してしまった。
カドウェルはレース用に作った純粋なレーシングカーだ、ナンバー付き、とは?
少し思い起こしてみると、そう言えば昔、カドウェルをお持ちの方で、どなたかがナンバーを取得したとの話を聞いたことがあった。
その車が鈴鹿に来たのかな、とサーキットに向かうことにした。
カドウェルとは、2005年に「ネオ・ヒストリックレーシングカー」としてカテゴリーを作ると共に、製作したクルマだ、確か15~16台を販売したと思う。
鈴鹿サーキットとTIサーキット(現岡山国際サーキット)で、それぞれシリーズ戦が組まれ、ウエスト・ビバーチェや、時にはケイターハム・セブンなどと一緒に走るレースを行っていた。
中には地方のサーキットに行った車もあり、その1台がナンバーを取得していた模様で、私も見たことが無かった。
さて、サーキットに出向くと、今のオーナーの方が綺麗にレストアされて、そして車検証の貼付のあるカドウェルがあった。
とりあえず、カドウェルの生みの親として記念写真を。
今はサーキット走行なのでナンバープレートは外されているが、そのプレート取付けステーはインテークの前にシッカリとあった。また、エアインテーク両サイドの、本来ブレーキダクト用の穴にはウインカーが上手に取付けられていた。
ノーズのマークが会社名のTokyo R&Dになっているが、当時のブランドはR&D SPEEDとしていて、そのステッカー(確か転写シートだった)の有無を電話で尋ねられたので、家の中を探しに探したが無くて、何とかレターヘッドを見つけてお渡しした。
オリジナルのカドウェルのエンジンはトヨタ4A-G 1600ccだったが、このカドウェル・ロード(仮名)には、ホンダインテグラ・タイプRの2000cc/220psのエンジンが換装されていた。カドウェルの僅か600kg弱の車重からすると、馬力当たり重量は2.7kgと、かなりのハイスペックになっている。
それにしても、よくもまあ2Lエンジンをギリギリ上手く押し込んだものである。
カドウェルの造形では、図面だけでは3次元曲面を表現しきれず、雄型の製作では私も削ってイメージどおりのラインを出したものだが、その中でも気に入っているのが、このリアスタイルで、曲線美のあった昔のレーシングカーのイメージを元に、言わばセクシーなラインを造り出せた。
そんな自慢話は別にして、オリジナルのテールランプは両端の円形の2灯だったが、ナンバー取得の為に内側に橙色のウインカーランプが増え、その内側にバックランプの1灯も増えている。
メーターパネルは新たに作られたようで立派なスピード/タコメーターが中央に。そうだ、オリジナルはレーシングカーなので正面にはタコメーターだけでスピードメーターは要らなかった。
また、ハンドルはクイックリリースで外れるようになっている。低いポジションのレーシングカーだけに乗り降りが楽になっただろう、製作当時は、こんな便利なものは無かった。
オリジナルのコックピット、丸メーターの整列でヒストリック・レーシングカーの雰囲気を表現していた。
驚いたことに、このオーナーの方は、あと2台のカドウェルを保有されているとのこと。
いやいや、それどころの比ではない、F1をはじめ沢山の以前のレーシングカーを保有されていて、それも動態保存というか、こうしたイベントに参加されて実走されている。
今回は、カドウェルと共にムーンクラフトの「紫電」を持ち込まれていた。
何と、車体は由良卓也氏により新しく作られたピカピカのもの。その存在感に多くの人の目を惹いていた。
今回のイベントでは、他にも色々なレーシングカーが走ったが、これはFL500のコースイン風景、懐かしい。
何と、2列目の黄色いハヤシ706には「まむしの秀六」こと、佐々木秀六氏が乗っていた。
ただ、降りる時には、今や体が大きくなり過ぎて、小さなFL500からは1人で降りられず、3・4人で引っ張り出してもらうほど。
これまた、何とも微笑ましい光景が見られた。
また、秀六さんを始め、何人かの昔の仲間に会うことが出来た。
個人的に、今後も続けてほしいイベントである。
今回のイベントは、昨年まで行われていた「SUZUKA Sound of ENGINE」に替わるものらしく、「Heritage Car/Motorcycle Owners Test Day 2020」として開催された。
一番最後にイベント紹介とは、話が逆になってしまったが、電話1本から始まり、サーキットに行って諸々認識出来たという、私の順番どおりの紹介ではあった。