先日、とても嬉しい贈り物を頂いた。
それが、この写真のVEMAC(ヴィーマック)RD180の1/43レジン製のモデルだ。
私が定年まで勤めていた㈱東京アールアンドデーから頂いたもので、EBBRO(エブロ)社がこのほどモデル化したものである。
私がVEMACの開発に深く係ったことから記念にプレゼントして頂いたという次第。
で、届けてくれた時に、赤と黄色の2台を持ってきてくれて、選べることになったのだが、私は迷わず思い出のある黄色を選ばせてもらった。
というのも、黄色のVEMAC RD200で、それこそ死ぬ程、頑張って走ったことがあるからだ。
時は2005年、自動車専門誌であるENGINE誌に、ある記事が掲載されていた。
それはスポーツカーの特集記事で、12機種を色々なテストを通じて比較したものだった。そこには飯田章選手や脇坂寿一選手といった現役のトップドライバーが乗って、愛知県の幸田サーキットでタイムアタックしたラップタイムも表示されていた。
我々のVEMACも開発でサーキットテストはしてきている。ただ、他車との比較テストをしたことはないのでタイム的に、そうした一般のスポーツカーの中で、どの辺りに居るのかは判らなかった。
そんなことから、その幸田サーキットに出向いてタイム比較テストをすることになった。
ドライバーはロートルの私であり、若干不利なのだが。
雑誌に掲載されていた各車のラップタイムは、
1位 インプレッサ S203(320ps仕様)47秒62
2位 NSX-R (サーキット仕様) 47秒83
3位 911カレラ (PMS付き) 48秒21
4位 ロータス・エクシージ 48秒38
以下、YESロードスター、TVR T350c、ポルシェ・ボクスター、ホンダS2000、BMW・Z4 3.0i、メルセデスSLK55AMG、フェアレディZ、マツダRX-8
という順位であった。
よく比較されるロータス・エクシージとタイム比較出来るように、タイヤは、その雑誌テストと同じヨコハマのSタイヤ(A048)に揃えて行った。
VEMACは890kgと、車重が非常に軽いのと、ダイレクトなステア リング感覚を優先するためにパワーステアリングを備えていない。
しかしSタイヤを履いて走り出すと、この小さなサーキットではコーナーが連続し、コーナーが小さいのでハンドルを切る量が多いのと、より小さなヘアピンコーナーなどではハンドルが.非常に重く、舵角を保持するのに息を止めて頑張らねばならないので息苦しい。
最初は運転手さんのコースの慣れや車の動きを確認することからはじめ、タイヤ空気圧の適正化などを1回大体6~7周程度走ってピットに戻るのだが、その周回でも結構キツくて、ピットに戻ると車から降りてレーシングスーツをハダけていた。
因みにタイムだが、こうした中で、48秒後半あたりまで出ていた。
まだ車というより運転手さんの方がタイム的に上げる余地がある。ということは意外とVEMACは速い車のようだ。
意外と、と言うと妙に思われるかも知れないが、それはVEMACが速さだけを狙った車ではなく、ロードゴーイングカーとして乗り心地やドライバビリティを優先して作った車なので、サーキットでのタイムは不利だろうと思っていたからである。
VEMACのダンパーは調整式なので、Sタイヤに適合するようにアジャストをすべく走行を重ねた。
タイムは48秒3まで上がり、エクシージを凌ぎ、ポルシェ・911カレラの次まできた。
その一方でドライバーはテストというよりもタイムアタック走行に入っており、ピットに戻ると車から降りてゼエゼエ言っている。何というテストドライバーだ・・・・私か。
気になったのは何度も走ることで、私もだがエンジンもバテているのだ。というのはエンジンルームの温度が非常に上昇していて、つまり、その熱くなった雰囲気温度を吸気とするので燃焼効率が落ちていて体感的にもパワーダウンが感じられた。
雑誌のテストは3月でかなり気温が低い時でもあり、条件的に差が大きいので、とにかく車を休ますことにした。でも一番休まるのは私だが。
休憩している時にサーキットの方から、あの取材の時、テストされたドライバーの方は、結構真剣に攻めてましたよ、と聞かされた。
そうか、こっちも負けてられんワイ。と、攻撃的な意欲が沸いてきた。
時間が過ぎ、エンジンも冷えた。もう行くしかない。
そこから、久々に目一杯攻めた。
小さなコーナーでは攻めると一層ハンドルが重い、息を止めて支える、くっ苦しい。
休憩中に考えたライン取りの補正も入れ込む。
このサーキットには1箇所全開のままでは飛び出しそうな、ヤバそうな箇所がある。あと、そこを攻めるしかない、気合一発、クリアした。
という感じで数周のタイムアタックを行うと、もう、これ以上タイムが上がらないことは判るのでアタックを止めてピットに向かう。と、ピットロードで万歳をして待ち受けていてくれた。
47秒60が最後に出たのだ。
やった、全部やっつけた。
車から降りると、立っていられないほどキツくて床にへたり込んだ。
ということで、その時の写真がこれで、後ろのタイム表示に47‘60が証拠、とばかりに記念写真を写したもの。
もともと、客観的に車の速さを探るためのテストであり、比較的軽い気持ちで臨んでいたのだが、終盤、いつの間にか完全にレースモードに入ってしまった。
しかし、ホントに死ぬほどきつかった。
お前もよく頑張ったよなぁ、黄色のヴィーマックよ。