久しぶりに日展を見に行ってきた。
何年ぶりだろう、いや何十年、いやいや半世紀にもなろうか。
日展が開催されている愛知県美術館は名古屋の栄にあり、行ってみると建物は以前とは全く異なり、大きなビル「愛知芸術文化センター」の8階にあった。
美術館ギャラリーの入口。
清潔で広い空間。
新しい建物だからこうなるのだろうが、しかし芸術的雰囲気は感じられないアプローチではある。
受付で写真撮影の可否を訪ねると、撮影禁止マークのある作品以外は可能(非ストロボ)とのことで、ありがたい。
何故か日本の多くの美術館では写真撮影を禁止しているが、ヨーロッパの美術館では殆ど撮影が可能だ。
日本で撮影を禁止するのは昔のフラッシュによる絵の劣化を嫌ったのか、あるいは作品の秘匿性なのだろうか。
とにかく、素晴らしい作品を写真で持ち帰れるのはありがたい。
開館して間もなく入ったのだが、すでにそこそこの人が見学されていた。
全て大きな絵画ばかりだったので、とても見やすく感銘を受ける作品が沢山あった。
一部ではあるが下に紹介してみよう。
「バラを描く」
何とやさしさを感じさせる絵なのだろう。
「Under 15」
愛知県知事賞 中日新聞社賞
「瞬く」
洋画に日本画を採入れた作品
「赫 赫」
何点かあった特選作品のひとつ。
まさに、赤に目を引きつけられる作品。
「時を超えて」
東京都知事賞
全体の構成やデッサンも素晴らしいが、近づいて見てみると、実に細かな線で細密に描かれていて、画力と共に労力に関心する。
「/」
「夢」
ダリ風の絵画。
やはりドキッとさせる絵画だが・・・
ダリのシュルレアレスム(超現実主義)の精緻な写実と妄想の作風、というカテゴリーに比較すると、衣服や布団や電気の笠などの質感が物足りないし、やはりろくろく首のような作風に違和感を覚えた。
「陽光」
私の好きな風景画だ。見るだけで落ち着く好きな絵だ。
ただ、「陽光」とするなら、もう少し太陽の光を当てて欲しかったかな。
この日、私の中でのナンバーワンはこの「伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の悲しみ」だ。
凄い ! 絵が訴えかけてくる !
ごく一部の作品を紹介させて頂いたが、素晴らしい作品を沢山見られて、少し胸の中が透いたような感覚を覚えた。
本当に日展に来て良かった。
PS : 長くなり恐縮だが ・・・実は、日展には、ある思い出があった。
私が未だ二十歳頃のこと。
自分の人生の方向性に迷っていた頃のことである。
どんな道に進むべきなのか・・・
やはり、好きなこと、あるいは得意なこと、を目指すべきなのかと。
そのひとつに絵があった。
絵でも描いてみようかと、名古屋のテレヒ塔の近くでスケッチをした時もあった。
今回、ついでに思い出の場所に行ってみた。
今は写真のように公園だけでなく水辺が出来て、建物が建っていたが、
この左の白い建物のあたりだった。
ベンチに座り、道向かいにある街灯を描いた。
その頃、こんな所で絵を描く人は少なく、私の後ろに数名が見ていたと思う。
その街灯の下に、大きく女の子の顔を描いた。
その女の子の大きな目から涙が出て、雫が下に落ちる。
その雫は、下にオットセイを描き、その頭に落ちる。
この辺りまで描くと、見ていた人は離れて行った。
完全におかしい人だと思われただろうし、そんな変なことをしていた。
そのような妙な絵も描いたりもしたが、
イラストボードにルマン24時間レースやF1の絵なども描き、喫茶店に飾って貰ったりもした。
まだレースの道を目指す以前の頃だったのだが。
そのうち日展をやっているので見に行った。
まさに、この愛知県美術館である。
若い私はショックを受けた、ぜんぜんレベルが違う。
このような絵は死んでも描けない。
そして、完全に一つの方向性を消し去った。
実は、そんな思い出のある愛知県美術館での日展だった。
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