私は日本の鉄道車両/列車で、最も良く出来ていると思うのが近鉄特急「ひのとり」である。
あくまで特別料金が必要な観光列車等ではなく、毎時1本走る定時運行の列車として。
私の住む鈴鹿から大阪に出掛ける都度、「ひのとり」を選んで乗るのだが、しかし、2両繋いでいるプレミアムカー(JRのグリーン車にあたる)は、発売の1か月前からすぐに満席になることが多く、席をとるのに苦労している。
因みにプレミアム料金は名古屋~大阪難波まで900円と、新幹線のグリーン料金2270円に比べると格段に安い。(私の場合の津~難波は600円と破格)
多くの方が「ひのとり」のプレミアムカーの快適性を認識されたようだし、名古屋~大阪間では近鉄を使う人が増えたのだろう。

プレミアムカーの快適な車内。
ハイデッカーで見晴らしが良く、静かな車内。先頭車は前面展望が望める。
オールレザーのシートの座り心地は良く、各シート後部にはバックシェルがあるので後ろの席の人に気遣うことなくリクライニングを倒せる。因みにレギュラー車にも全車にバックシェルがある。
大きな窓は個々にあり、カーテンは電動で上下出来る。左の席のように下げ切らずに日照を避けて沿線の美しい景色を見ることが出来る。

シートアジャスターは各ひじ掛けの上にあり、ご覧のようにリクライニングだけでなく、伸縮式のレッグレストがあり、また、シートヒーターもあるので冬場には有難い。上部の電球マークは読書灯スイッチ。

プレミアムカーの入口。
座席はハイデッカーなので階段を上る。
右側には無料の大型のロッカーがある。扉があるのでスーツケースが飛び出ることもなく、鍵もかかるので海外旅行に行く際に利用し、安心出来た。このロッカーはレギュラー車にも設置されていて、2両に1カ所の割合である。
次に、左側にはコーヒースポットがありコーヒーメーカーとスナック菓子の自販機がある。列車に乗れば、暖かいコーヒーは有難いもの。

編成中央にある自販機とロッカー。
乗車前に飲物を買い忘れても、上記のコーヒーメーカーと共に飲物の自動販売機が備わっている。
「ひのとり」は名古屋~大阪難波間2時間6分で走る2時間余りの旅程だが、こうしたサービスは気が利いていて素晴らしい。
というのも新幹線との比較である。より長距離を走る新幹線は車内販売を無くし、自販機すら車内には無い。インバウンドの増えている今日、乗車前に飲物を買わないで乗る方も少なくないだろうし、また、大きなスーツケースの置き場が無く、無理やり網棚に乗せたり、女性はひざ元に置いたりして狭いスペースで長時間座っている。
新幹線は3分おきともいう超過密ダイヤを高速で安全、正確に走らせることは素晴らしいことだが、一方で、大量輸送ばかりで乗客へのサービスを忘れているのでは無いですか、と思ってしまう。

これは上の網棚を見て頂きたい。強化ガラス製なので荷物がよく見える。
物忘れ防止対策で、可視化がされている。


近鉄の切符(上)と新幹線の切符(下)。
何が違うか?
近鉄「ひのとり」はネット購入で券の発行はなく、最近乗ったアーバンライナーの特急券で恐縮だが、ともかく、よく見て頂くとJRの切符には基本的に日本語だけでアルファベット表記が無い。
一方、近鉄にはアルファベット表記があるのは親切というか、もはや当然である。
もう一度言うけど、海外からの旅行客は増えていて多くのインバウントの方が新幹線を利用するであろう現在、新幹線の、この切符では列車名すら判りづらい。
私は以前に外国人客を名古屋駅に送って行った折、切符に鉛筆で「Nozomi」「Car No」「Seat」と書いて渡したことがある。

1編成に2カ所あるベンチスペース及びロッカー。
ちょっとした休憩に大きな窓のある明るいスペースは気が利いている。
また、子供さんが座席でグズッた時に、このデッキにあるベンチスペースであやすなど出来るが、実は私の孫も、そんな経験をしていた。
こうした、ゆとりをも感じさせる設計に「ひのとり」の素晴らしさを感じる。
特別なイベント列車ではなく、60分ヘッドの定時走行の列車にこそ、普段の豊かさを感じたいのである。


また、近鉄沿線は景色が素晴らしい。特に三重県の伊勢中川の分岐あたりから青山トンネルを抜けて奈良の長谷寺あたりまでは、山間部の美しい景色の中を走る。

終点の難波到着前には、室内灯を青色にして変化をつけ終点の案内放送が入る。
何か気持ち良いものだ。

ということで、私は大阪に出掛けることは、近鉄に乗る楽しみにもなっている。
以前の「アーバンライナー」も良かったが、「ひのとり」は近鉄最新のフラッグシップ車両であり、ふさわしい素晴らしい列車である。
コメント