今年のカー・オブ・ザ・イヤーがホンダ フリードに決まった。
懇意にさせて頂いているホンダカーズ三重北さんに試乗車があるので早速試乗させて頂いた。
話は少し飛ぶが、以前、レーシングドライバーとして現役だった頃、色々テスト走行も行ったが、クルマが良い状態の時にはピットロードを出て1コーナーに向かうまでに「これはいい!」と判ったものだ。
このフリードも、お店を出て走り出しただけで、「これはいいぞ!」と思えてしまった。
正直、今年のカー・オブ・ザ・イヤーの発表を聞いた時、意外な感じを受けた。
例年、選ばれるクルマは、言わば華のある車両が選ばれてきており、こうした3列シートのファミリーカーが選ばれることは無かったからであり、また、エクステリアデザインも「四角い箱」的で、流麗なデザインのクルマとは対極にあるように思えたからである。
しかし、近年ホンダのクルマの開発は、クルマの中身が大幅に進化していることは、このブロクでも紹介してきたが、まさに、このフリードは乗ってすぐに「これは良いぞ!」と思わるほどであった。
とは言え、もっと走ってみないと判らない。ということで色々な種類の道を走ってみた。
なるほど、まずはボディ剛性が高いようだ。シンプルな車体形状が影響しているのかも知れないが、それゆえ、サスペンションが良く働いている模様だ。何よりショックアソーバーが素晴らしい。
突き上げの無い、柔らかい乗り心地が何とも心地良く、舗装の継ぎ目や段差を見事なまでに吸収してしまう。
サスペンションが大袈裟に言えば猫足のようにしなやかに動くのだ。では、柔らかい足ならコーナリングはどうか、と、中/低速のコーナリングを試してみた。意外にも、この背の高い車体のロールを抑えて比較的シャープなコーナリングをして見せた。ダンピングの良さと、おそらくスタビライザーの効きを良くしているのだろう。いや、この背丈のクルマとしては素晴らしい足だ。
次に、高速道路での安定性も確かめる、100km/hで走るが、当然のようにスタビリティは高く、普通に走る分にはなんの問題も無い、試しにステアリングを少し動かしてみたが、車体が振られる様子を見せず、不安なく安定性を保った。
つくづく乗り心地と安定性を確保したサスペンションの良さを感じた。
動力性能。
これも車体同様に、とても気持ち良く乗り易い、非常に良く走るクルマだ。
とにかく気持ち良く走る。ハイブリッドなので当然レスポンスが良く、高加速も得られるが、唐突さはなく、とてもスムーズ、低速からシームレス(継ぎ目の無い)な感じで加速するので自然な感じで気持ちが良い。ただ加速時には、エンジン音がかなり入ってくるのでレシプロ的な感じがする。
因みに、勢いよく踏み込んで走らせると、エンジン音は大きく唸り、軽快に走るが、まるでボーイズ・レーサーのようですらある。
フリードはファミリーカーだった。こうして3列目のシートが作れて6人が乗車出来る意味合いは大きい。例えば、4人家族に親夫婦が訪ねてきた時など、1台のクルマで移動が出来る、といった具合に。
ただ、3列目のシートは、その形状や狭いスペースから長時間乗るには楽ではなかろう。
私のヴェゼルより進化していたのは自動運転というかホンダセンシングである。
ヴェゼルでは車線維持が65km/h以上で入り、55km/h以下になると切れる。つまり高速道路にのみ働く設定だったが、ZR-V同様に止まるまで車線を維持してくれる。これは大きな進化で、一般道でも、ほぼ車線の中央を走ってくれるので安全である。
そして車間距離設定しておくと、クルマは概ね自動運転に近くなる、試しに渋滞状態で各設定を入れておくと、これは便利だ、前の車が止まれば設定の車間距離で止まるし、前が動き出せば自動で動き出した。無論、車線はちゃんと保たれるので、何もすることが無い、ハンドルを握り見ているだけだ。これは都会に住む人や普段から渋滞に遭う人にとって有難く、渋滞疲れを大きく軽減してくれよう。
とは言え、全てクルマ任せとはならない。事故渋滞など、先の方で止まっていたりするのを発見するのは無理であり、人間の能力には遥かに及ばない。
やはり運転は常に意識を持ってする必要はある。
偉そうに言う訳ではないが、カー・オブ・ザ・イヤーの審査する皆さんは、ちゃんと見ていたのだな、と改めて思った。この派手さの無い3列ファミリーカーを選んだことに。
実際に乗ってみれば、その走りの素晴らしさに感心されたのでは、と思う。
私が感心したように。
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