BMWのX5を運転させて頂く機会があった。
やはり予想通り、トルクフルな加速感、乗り心地の良い素晴らしいサスペンション、爽快なドライバビリティのクルマだった。
乗せて頂いたBMW X5の諸元は、直列6気筒 DOHCツインターボ ディーゼルエンジン2,992ccで 265ps/4000rpmだが、トルクが大きくて620Nmを2000-2500rpmで発生する、そう、この大きなトルクが肝だ。
そして、トランスミッションは電子油圧制御式8速ATで、4輪駆動である。
タイヤはContinentalの265/50R19を履くが、SUVではあっても50プロフィールという扁平タイヤを使用する。
そして、サスペンションは4輪アダプティブ・エア・サスペンションと呼ぶ、エアサスが装備されている。
これもまた、このX5の大きなアイデンティティだと思う。
車体は大きめで、全長×全幅×全高が4,935×2,005×1,770mmで、特に全幅が2mを若干超えている。
ドアを開けると、まだ新しい革の強い匂いが高級感を漂わせる。
好ましいタンのレザーシートに乗り込むが、シート調整をするとピタリと良いポジションが取れた。
スタートボタンを押すが、誠にエンジンは静かでディーゼルエンジンを全く意識させない。
まず走り出して真っ先に気付くのが、スムーズな動き出しと、そのまま力強い加速感へと繋がる気持ち良さである。信号等で止まる都度、その後の発進から加速が楽しみになるほどである。
ディーゼルターボの素晴らしさは、低回転から立ち上がるトルクの太さであり、それは、いつもよく使うあたりの速度域で、大変有効に働くことになる。
因みに、信号等で止まると、すぐにアイドリングストップでエンジンは停止する。そして、アクセルを踏むと瞬発でエンジンはかかり、先述の気持ち良い加速へと入って行く。
そう、ここでもディーゼルを全く感じさせることは無く、これまで乗ったアイドリンクストップから発進する現代のクルマの中でも、最も素早く掛かり、そのままスムーズな走り出しとなる。
いやー思い起こせば、昔のディーゼルエンジンはグローで暫く燃焼室を温め、それからセルを回して、ウーン・・・ガラガラガラといったようにエンジンを掛けていた、あの頃とは、まさに隔世の感がある。
そして、乗り心地がとても良く気持ちが良い、エアサスのお陰だ。
以前にメルセデスのCクラスのエアサス車に乗せて頂き、エアサスの良さを体験したが、X5は車体が大きく重たい分、尚更乗り心地を良くしている。
無論、走行モードの設定があり、まず通常はコンフォート・モードであり、その乗り心地が気持ち良い。
乗り心地に加えて運転の気持ち良さもあるが、BMWのアイデンティとも言えるステアリング系の素晴らしさである。ステアリングは正確で遊びが無く、しかし落ち着いたハンドリングが得られるのは、これまでのセダンだけでなく、SUVの、このクルマにも移植されている。
自動車専用道に入ったので、走行モードをスポーツにして、フル加速を試みた。
この大きな車体をグーンと実に強い力で加速し、あっという間に100キロを超える。
正確に言うと、80~90キロあたりまでは非常に強い加速力で、そこからは徐々に加速が緩んでいく感じがしたが、もう、充分過ぎる動力性能である。
そして、下道に入る時にコンフォート・モードに戻す。
スポーツ・モードの時には気付かなかったが、車高が少し下げられていて、勿論足は硬めになっていた。それがコンフォート・モードを戻すと何となく柔らかさと、少し腰高感がある気がした。
なるほど、だから高速での安定感があったのかと、後から納得した。
ブレーキのフィールも良い。この大きな車体にもかかわらず、それを意識させない、ごく自然な感じのブレーキもまた素晴らしい。ブレーキの立ち上がりから止まる間際まで、意識のままに効くので、妙な言い方だが、ブレーキングの運転も気持ち良い。
気になったという程では無いが、車線を変える時のレーンチェンジウォーニング(車線変更警告システム)によるハンドル重さが、少し強いかなと思ったが、当初の設定より変更されて軽くなっている由。
確かに、片側1車線の高速道路の走行や対面通行などでは、これくらいのアシストがある方が安心出来るかも知れない。
変な話、例の常磐道でのあおり運転で大きな問題になった件、このX5の試乗車を乗り回していた。BMW側にとっては、そのあおりでX5のイメージを落とされかも知れない。
しかし、実際に乗ってみると、こんなにも良いクルマだったのだ。