モータースポーツの世界では、新車の初走行をシェイクダウンという。
特に、新型車が完成して初めてのシェイクダウンを行う時は興味深い。
久しぶりに、そのシェイクダウンの場に立ち会った。
その車両はWEST 19J、レースカテゴリーはスーパーFJ(S-FJ)で、本格的フォーミュラカーの入口たるカテゴリーである。
S-FJのレースは全国の7箇所のサーキットで、7つのJAF地方選手権シリーズが開催されている。全て国産のレーシングカーで戦われており、現在4メーカーの車両がある。因みに完成車価格は350万~450万円位だ。
フォーミュラの入口とは言えども、このS-FJで優秀な成績を挙げたドライバーは、F4、F3とステップアップを果たし、僅か数年後にはメーカーの専属ドライバー、或いはプロフェッショナルのドライバーとなっていく例が少なくない。
逆に言うと、現在、国内外で活躍している新進気鋭のドライバーも、つい最近まではS-FJで走っていた、という感じなのである。
こちらはシェイクダウンの前日、ドライバーのシート合わせをしている姿である。
大きなビニール袋の中でウレタンを発泡させる途中にドライバーが乗り込み、ドライビング姿勢を取ってウレタンが膨らみ固まっていくまで姿勢を取り続けると、体にピタリと合ったシートが出来る寸法。
車の下を覗いてみると流石は最新型だけあって、サイドポンツー前端の処理は、エアロダイナミクスがトップカテゴリーの流れを組み込んだ見事な構成を見せる。
前日に鈴鹿サーキットに運び込まれて撮影が行われ、そして走行当日、走行前の各種準備作業が行われ、いよいよドライバーが乗り込む。
ピットアウト。企画から開発/設計、冶具や型を起こして各種の部品を製造し、そして組み立てられて形となった新しいレーシングカーが、いよいよコースに出る瞬間でもある。
最初の1周を回ってきたところ。
何故かホッとしてしまうもの。
数周のチェック走行を終えるとピットイン、ドライバーのコメントを聞き、デザイナー、エンジニア、メカニックが各部のチェックに入る。
そして、再びコースに出て行く、そんな繰り返しがここから始まる。
こうして無事にシェイクダウン・テストは行われていった。
速かったのか?
昔は車両のレベルも低く、いきなり好タイムを出すこともままあったが、進化した現代のレースに於いては、既存のライバル車も、出来てから多数の走行をこなして今の性能を出していて、そんなに簡単に凄いタイムなど出るものではありません。
この生まれたてのWEST19J、これから走る度に速さを身につけて行くことだろう。