暫らく無かったのだが、このところ急に東京出張が多く、この1ヶ月に4回も行くことになり、まるで現役当時のようだ。
それはともかく、移動には新幹線を利用するのだが、N700Aは以前より格段に快適になってはいるものの、あくまでも移動の道具的であり、何か、もう少し旅行気分が味わえたり、快適であっても良いのでは、と思う。それはイギリスの鉄道のように。
イギリスのように、とは意外に思われるだろう。
イギリスは鉄道発祥の国とは言えども既に斜陽で、今では日本から日立の車両を大量に発注している国なのに、と。
私も昨年のイギリス旅行をするまでは、そのように思っていた。
しかし、イングランド内をぐるっと回り、色々な列車に乗ってみると、イギリスの列車旅の快適さを痛感したのである。
例えば、新幹線とペンドリーノを比べてみよう。どちらも長距離、高速、両国のフラッグシップたる電車である。(因みにイギリスでは特急や急行などの列車格式の名称はなく、よって特急料金の設定も無い)
新幹線は300km/hで走り、ペンドリーノは200km/hだ。
よって、スピードは? 時間の正確性は? 列車本数は? 乗車人数は? といったような比較をしてしまうと圧倒的に新幹線が優位である。
そうではなくて、移動している間のひとりひとりの快適度は、という比較をすると、今度は圧倒的にペンドリーノが優れているのだ。
写真はロンドン・ユーストン駅。ペンドリーノは主にリバプールやスコットランド・グラスゴーへの西海岸線を走る。
ペンドリーノの車内。イギリスの鉄道車両の特長で、大きな固定テーブルのある対面クロスシート席が殆どで、シート自体の形状が良いのか、とても快適であるし、1人当りのスペースが非常に大きい。写真は1stクラス車内。
テーブルライトが良い雰囲気で、その下にはコーヒーカップが置いてある。
始発駅からは当然ながら、途中の駅からでも乗るとすぐにアテンダントがワゴンを押して現れ、ウエルカムドリンクと食事やスナック、果物等をサービスに来るし、アルコール類もある。
2ndクラスでは、そのワゴンが有料の車内販売になる。
こちらはロンドン~スコットランド間の東海岸線を走るインターシティ225(IC 225)。機関車方式の列車だがペンドリーノ同様200km/hで走る。
左は”フライング・スコッツマン”のヘッドマークが付いているが、車両は同じIC 225だ。
こちらがIC225の1stクラス車内。
やはり快適なシートと大きなテーブル。上にはコーヒーカップが、これだけでも落ち着く。
私は朝8時のキングスクロス発エディンバラ行き(特急)に乗ったのだが、朝の1st classではフル・イングリッシュ・ブレックファストが配られる。
(17時~19時発の1st classではディナーが出るとのこと)
私の席には、まだオレンジジュースのみだが、斜め前の席では、サラリーマンと思しき4人席に、黒チョッキのアテンダントが朝食のホットミールを配っているところ。
この風景に「こんな出張ならいいよなー」とは独り言。
私の席。パンはもう食べてしまったけれど、お皿にはこうしたホットミールを、アテンダントの持って来た料理の中からチョイスをする。
車窓に写る、緑の広がるイギリスの穏やかな景色を見ながら、フル・イングリッシュ・ブレックファストをゆっくり楽しむことは、とても豊かな気分になれる。
などと、先日、殆どカーテンブラインドの閉められた新幹線の車内で、思い出していた。
ロンドンから西南部を走るグレート・ウエスタン路線のIC125。
40年前から活躍するIC125は、まさに、これから日立製のClass801,802に置き替えられていく。
IC 125の1st class車内、40年前でこれですよ。
何とも重厚なシートと大きな固定テーブル。このタップリとしたスペースが何とも快適だ。
勿論、こちらでも乗車すると、黒チョッキによるドリンクやミールサービスのワゴンが回ってくる。
奥のシートはリクライニング状態で座面が前にせり出した状態。
あと、窓際のテーブル上にはBOXが見える。
その窓際のBOXのアップ。
まず、上にFree Wi-Fiの丸いシールが貼ってあり、BOXには中央にUSBコネクター2コと、その両サイドには電源プラグ、が備わる。流石に40年前からではなく、近年に後付けされたのだろう。
一方、新幹線では「この列車はWi-Fiがお使いになれます」といった放送がされていた(最近は聞かないが)、しかし新幹線のWi-Fiを利用するには、事前に手続きをしなければならない。それでは初めて乗る人、海外から来た人など、利用出来ないじゃないですか。
因みに、イギリスではFree Wi-Fiは普及していて、空港や主な駅を始め、レストランやパブ、地方の小さなホテルに至るまで、広く使えるようになっていた。
さて、ここまで優等列車(特急と呼べないので)ばかり紹介したが、ついでに普通列車も紹介してみたい。
こちらはClass375電車。快速といった列車に使われている。
私はドーバーの隣のフォークストンからロンドンまで乗ったが、主に昔のサザン・レイル路線で使われている車両のようで、第三軌条から集電していた。
そして車内は、ご覧のように非常に快適なものだ。2nd class 要するに普通席である。
写真は出発して間もないが、約1時間の乗車でロンドンに近づくほどに席は埋まり、ごく一部の人が立った状態でロンドン・ビクトリア駅に到着した。
このClass158はイギリス内のあちこちで活躍しているディーゼルカーである。
これはセトル~カーライル線のセトル駅で写したものだ。
美しい跨線橋が目を引く。
車内はというとご覧のように、やはり大きなテーブルを備えた、ゆったりとした、これまた快適なクロスシート。これでも2nd classですぞ。
ディーゼルエンジンの音は静かで車内にあまり入らないし、スピードは速く最高速145km/hまで出せる。
無論、イギリスの全ての列車が快適なものではなく、リバプール近郊で乗った通勤タイプの電車(Class 319)はシート幅も狭く、車内清掃も行き届いていなかった・・・リバプールの街自体、あまり綺麗じゃなかったけど。
また、南西部デボン州で乗った2軸ディーゼルカーClass 143は、車内は粗末なシートで、路線バスに毛が生えた程度だった。それでも120km/hくらいで飛ばして走るんだけど。
写真は、海が荒れると大波を被ることで有名なDawlish駅にて。
とはいえ、このあたりはイングリッシュ・リビエラとも呼ばれる海岸べりを走り、美しい景色自体が快適なものだった。
このように車窓の景色は愉しみたいものです。(カーテンを閉め切るな!)