吊掛け最速?

Railway

職業柄スピードに敏感に反応してしまうのだが、今回は、この電車の話。
このどこか日本型を思わせる顔をした電車はリバプール駅に停車中のClass319型である。
ご覧のとおり一寸古く、地味な電車ではある。

イギリスのメインラインのひとつ西海岸線は、ロンドンとスコットランドのグラスゴーを結ぶ。

□カーライル進入ペンドリーノ.jpg私はスコットランドの近く、写真のカーライル駅からバージントレインズの快適なペンドリーノに乗って南行し、その日の宿泊となるリバプールに向かったのだが、リバプールは西海岸線の本線よりも西に外れるので途中で乗換えが必要だった。
□ウィガン駅.jpg
ウィガン(Wigan)という駅からリバプールに分岐する路線があり、そこで乗り換えたが、その時に来たのが、この近郊型の電車Class319型だった。
ペンドリーノの快適さからはガクッと落ちるけど、まあ約40分程度、イギリスの通勤型電車に乗るのも良いかと。
□Class319_車内.jpg
乗ると座席は2席-3席の典型的通勤型形式で、20時前ともなるとガラ空きの状態だった。
やはり車内は使い込まれた印象で、少し床も埃っぽくて好ましくない。
そして走り始めると、「グォーン・ウォーン」とモーターとギアの唸る音。
「おおっ、吊掛けじゃないか!」
私の中で、いきなり興味が湧いた。
吊掛け式とは、駆動方式のことで、モーターを車軸と並行に置き、平歯車で駆動する方式だが、車軸の上下運動に対応する為にモーターを車軸に半分載せて位置決めし、反対側は台車枠に載せるというレイアウトで、昔の電車は多くがこの方式だった。
ただ、吊掛け式はモーターの荷重が車軸に載ってしまう事や、逆に車輪の振動がモーターに伝わってしまう。あるいは音が大きいなどの欠点があり、その後、方式は次々と進化し続けて変わり、日本では吊掛け式電車は殆ど無くなってしまった。
しかし、その懐かしい「グォーン」という唸り音がこんなところで聞けるとは!
西海岸線の本線から分岐すると唸り音をあげてどんどん加速して行く。
「グォーーン」の加速音が止まらない。
私の知る吊掛け電車は「グォーン・ポン・ウォーン」と、
“ポン”は加速を終えてモーターへの電気を切る音で、”ウォーン”は平歯車から出る唸り音だろう。
そして、昔の電車は80キロも出せば飛ばしている印象だった。
それが一向に加速が止まない「グォーーーーン」と。

□車窓飛ばし.jpg速度は、もうとっくに100キロは越えて、周りの景色は流れるし、駅を通過する時など「ヒュン・ヒュン」と駅が後ろに飛んで行く、体感的に140~150キロあたりに感じる。
もう、それまでの吊掛け電車の懐かしさは消えて「いやー、カッ飛ばすなー!」と感心するばかりだった。
帰国後Class319を調べてみると最高速は160km/hとあった、なるほど。
因みに、もう少しスペックを見ると、架線式交流25KVと第三軌条直流750Vに対応、4両編成で動力車は1両(丁度、動力車に乗ったようだ)、1988年にデビューしている電車だった。
このチョット醤油顔の、以前の日本の電車をイメージする吊掛け電車が、日本では新幹線以外では滅多に体験出来ないスピードで(最近では京成スカイライナーもあるが)、カッ飛ばして走る様は新鮮な驚きだった。
□Class319_サイド.jpg

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