かねてより気になっていたアルファロメオ4Cだが、先日開催された「八光ジラソーレ走行会」で乗る機会を得た。
当走行会ではインストラクターを務めさせて頂いていて、先導走行やレーシングTAXIを行っているのだが、4Cは今のアルファロメオのフラッグシップたる車であり、リスクを伴うサーキット走行には持ち込まれないだろう、と思っていたのだが・・・
流石は元気一杯の(関西で独り勝ちとも言われる)八光カーグループ、このアルファ4Cをサーキットに持ち込んで来られた、太っ腹!・・・いや、壊しちゃいけない!!
やはり、その見掛けから乗り込む前には多少の緊張感が伴う。
ドアを開けるとメインフレーム部のCFRP(カーボン・ファイバー)が光って存在感を見せる。こうしたスポーツカーのメインフレームにCFRPを使うことは大変有効で、軽量、高強度、高剛性が得られる。問題はコストが跳ね上がることだがイタリアはCFRPの生産ではコストが低く、レーシングカーのフレームも多くがイタリアで作られている。
因みに簡単にスペックを紹介すると、エンジンは直列4気筒1750cc DOHC16バルブ、インタークーラー付の直噴ターボで出力240ps/6,000rpm、車両重量1,100kgでパワーウエイトレシオは4.58kgとなる。0~100km/hまでの加速は4.5秒だ。
トランスミッションは6速で乾式デュアルクラッチ・オートマチック、つまりオートマとは呼ぶもののアルファお得意の乾式多板クラッチを使ったギアミッションであり、トルコンのパワーロスを嫌った、まるで最近のレーシングカーそのものである。
よってクラッチペダルは無く2ペダルになる。通常は両方のペダルを右足で操作するのだろうが、幸いなことに私は普段からAT車に乗る時は左足ブレーキで運転しており、こうしたサーキットドライブでも違和感なく左足でブレーキを使えるので、右足を両ペダルに乗せ替える時間が無く、迅速でスムーズな運転が出来る。
シフトはオートマモードもあるが、当然マニュアルシフトにセットしてパドルシフトを楽しむことになる。
いざ走り出すとダイレクト感の塊、まるで手足と車がくっついているかのようだし、アクセルは思う以上にさえ反応する感覚だ。
最初は先導レッスン走行と言って、参加者の皆様を私の後ろに入れ替わりながら付いてきてもらい走行ラインを学んで頂くので120km/h以下の普段の走行に近いスピードで周回するのだが、車があまりにシャキッとしているので、これはレーシングスピードで走る限界域では敏感過ぎるのでは、と思ってしまった。そして先導走行の後、単独でレーシングスピードで走ってみた。まずは強烈な加速に驚く、カタログデータの0~100km/h_4,5秒より、実走行上の(ゼロからでは無い)加速の方が遥かに強烈だ。そして直噴ターボはタイムラグなど無いに等しいレスポンスの良さが気持ち良い。
パドルシフトの反応は実に素早く一瞬にしてギアが入れ替わる。安全なのはシフトダウンを早過ぎて下のギアを選ぼうとしてもギアが落ちないのでオーバーレブの心配は無い。
いや、まさに現代の車だ。良く出来ていて電子制御によりレーシング走行でも安全でスムーズなドライビングが出来てしまうのである。コーナーでは限界域に達するとトラクションコントロールがとても上手く働き、お尻を持って行かれる兆候すら見せない。
これは後で乗ったアバルト595をはじめ、今の車はトラクションコントロールのおかげで安全に走れるのだが、ただ4Cの場合には純粋なスポーツカーゆえに高次元でのコーナリング中の制御の話である。それはミッドシップ・エンジン・レイアウトの欠点でもあるZ軸(縦軸)回りの回転モーメントが発生した場合の非コントロール性、危険性を全く排除出来ている。
ブレーキもFront/17in、Rear/18inのホイールに収まる大径のドリルトベンチレーティド・ディスクにブレンボのキャリパー(Front 4pod)は非常に良く効く上、こうした真夏のサーキット走行でも余裕で終始効きは安定しており、全く問題を感じなかった。
こうしたスポーツ・ドライビングだけでなく通常の運転に対応してセンターコンソールに“D.N.Aシステム”と呼ぶスイッチがある。Dはダイナミックモードで今回のような最高性能モード、Nはナチュラルの略で市街地用でのスムーズな走行用、そしてAはオールウェザーで悪天候や悪路に備えて安全性を発揮するらしく、アクセルの反応も穏やかになり、そして例えば1輪が空転すると、そのタイヤだけブレーキをかけて空転を止める、という機構になっている、とのことだ。
無事に走行を終え「良く出来た凄い車だなぁ」というのが ”アルファロメオ4C”の感想かな。